野村氏舌禍事件を追ってみるテスト


エアリス殺しましょう、ティファ出しましょう

『ファイナルファンタジーVII 解体真書 ザ・コンプリート』1997年3月24日発行

――キャラクターが誕生するまでの隠されたエピソードのようなものはありますか?
「じつは、はじめはエアリスだけで、ティファはいなかったんです。ある日曜の夜、ディレクターの北瀬さんに電話で『エアリス殺しましょう、ティファ出しましょう』と提案しました(笑)。ヒロインがふたり登場し、片方が死んでしまうというタイプのものがなかったので」
(p.33 「FFVII開発者インタビュー1」)

攻略本のインタビューで核心の部分が抜けて、シャレの部分だけが掲載されちゃったから

『ゲーム・マエストロ vol.4 デザイナー/イラストレーター編』2001年5月18日発行

イ:「FFVII」の物語は、ヒロインが宿敵のセフィロスに殺されるといった、死を描いた物語でしたね。
野:ああ。エアリスが死んでしまうシナリオを僕が考えたと思ってる人がいて、一部からすごく攻撃されたことがあるんです(笑)。攻略本のインタビューで核心の部分が抜けて、シャレの部分だけが掲載されちゃったから「おいおい違うだろ」ってことになったけど後の祭り。いちやく「FF」スタッフのヒール(悪役)になりましたね(笑)。
イ:今までモンスターデザイナーとして、プレイヤーのヒールを演じてきてたのに、今度はシナリオ面でヒールを演じることに(笑)。
野:本当のところをいうと、「FFVII」のテーマが「命」だったんです。坂口さんから「命をテーマに描く以上、生と死を描かなくちゃいけない。とにかく死を描かなくちゃいけない」という指示があった。キャラクターの死で、プレイヤーに痛みを感じさせたかったんですね。そうするとヒロインのエアリスの死を描くのが、一番痛くて、重いわけです。ならば、その死をちゃんと描くためにも、エアリスの死を表現することになりました。
イ:ロールプレイングゲームにおいては、全滅すると普通はゲームオーバーです。だから、またやり直す。つまり、プレイヤーにとって死はやり直しがきくものなんですよ。にもかかわらず、「FFVII」のストーリーの中には絶対やり直しがきかない死がある。そこにプレイヤーは反発してたんじゃないですか。
野:登場人物が死ぬというのは、ロールプレイングゲームではありえない展開ですよね。だからこそ、死がダイレクトに伝わる。エアリスの死が唐突だという意見もあったんです。でも、あえてそうしてあるんじゃないでしょうか。突然やって来る死の哀しみ。あれも話しておきたかった、あれも伝えておきたかった、こう後悔する哀しみ。それが表現されてるんだと思います。
イ:にもかかわらず、野村さんがエアリス殺しの張本人になってしまったわけですね。自分の作ったキャラクターが死ぬことはつらくなかったですか。
野:それは……ちょっと。でもね、ゲームはひとりで作るものではないし、シナリオ上必要ならやるべきでしょう。まあ、結局俺がエアリス殺しの汚名をひとり背負ってしまったわけですが、ディレクターの言葉を借りれば「ヒール(悪役)はひとり、チームに必要なんだよ」って(笑)。「俺かい!?」って(笑)。
イ:それはヒドイ(笑)。
野:最近は、あまりに俺が叩かれているんで、「悪いことしちゃってな」って、言ってくれているみたいですけど。今となっては別に、いいんじゃないんでしょうか?(笑)

FFVII当時に、意図と違う表現が自分の言葉になっていて

『キングダムハーツ アルティマニア』2002年6月13日発行

エアリス
 FFVII当時に、意図と違う表現が自分の言葉になっていて、正しい表現への差し替えをお願いしたのですが、手遅れでした。この役は、途中まではPEのアヤにする予定でしたが、FFVIIを担当していたスタッフからの要望もあり、今回のエアリスの登場が実現し、そこからクラウドとのお話が膨らんでいきました。キャラクターの物語の展開は、こういったやり取りの中から生まれる場合もあります。
(p.525 「野村哲也PRESENTS イラストギャラリー」)

天使の囁き